ガラスの「割れない話」

 まずは、とある生徒さんの疑問に答えるべく、「割れない話」を書いてみることにしました。
 おそらく、そういう切り口は、きっと、いろんな人にとっても、何か役に立つかなあと。

 ガラスの割れない話、書き始めたら、どうしても大作になってしまうことが分かりまして。
 この割れない話は、「概要」を、「俯瞰的に見る」というものにすることにしました。
 でないと、収拾がつかなかったのです。(笑)

 ①できるだけ、割れる割れないに、関係のある話だけに絞る
 ②エアバーナーで、ソフトガラスで、立体を作る際の話として書く

 ああでもないこうでもないと考えていて、気付いたことがあります。
 きっと、その生徒さんが知りたいことは、「割れないためにどうするのか?」だけではない。
 作品を作るという流れの中で、ガラスで形を作ることに関するポイントと絡めた、割れない話が必要になるんだなあと。
 とにかく割れなきゃ良いという話ではないんですね。
 その辺も、最後に、少し書こうと思います。

 短く、シンプルにするために、乱暴なくらい、簡潔に生きたいと思います。
 とりあえず、文章だけで、アップします。
 追々、図解が入るかも?

1⃣ガラスの性質

 ガラスが割れる理由を知るために必要な、ガラスの性質を、押さえておきましょう。

 ❶ ガラスと温度

「中間の温度」
 ガラスは、高温では、ドロドロ。形を変えるための、作業温度です。
 低温(常温を含む)では、コチコチ。形を変えることはできません。
 実はその中間の状態があります。外側の外形は変わらないけれど、内部の分子レベルでは、わずかに移動できる温度です。

「割れるのは、コチコチの時」
 ガラスが割れるのは、コチコチの時。
 ドロドロの時は、割れる心配はありません。
 中間の時は?相当、派手に引っ張ったら、割れるかもしれません。が、内部に柔軟性のようなものがあるので、ここで割れることは、あまり考えなくてよいと思われます。

 ❷ ガラスの膨張収縮

「ガラスは、熱すると膨張、冷ますと収縮する」
 ガラスは、コチコチでも、ドロドロでも、その中間でも、温度が上がる時膨張し、温度が下がる時、収縮します。
 ただ、割れることに、主にかかわるのは、コチコチの時の膨張収縮です。

「膨張率」
 コチコチの時、1℃温度が上がったときに、どれだけ膨張するかという数値があります。(体積が増えるという値ではなくて、長さがどれだけ伸びるかという値だそうです)基本的には、この値が同じ(プラスマイナス3程度)ガラス同士だと割れず、ある程度以上違うと、割れてしまうのだそう。
 基本的には、膨張率は、同じものを使いましょう。
 ただし、同じ種類のガラスでも、色によって(発色剤が影響して)、どうしても膨張率が少し違ってしまうことがあります。この場合、他の条件をより割れにくい状態にしないと、割れやすくなります。
  

 ❸ ガラスの中の永久歪み

「固まる時の、温度のムラ」
 ガラスが、ドロドロの状態から、コチコチに固まる時、ガラスは、部分によって、温度がまちまちになります。
 最後に焼いた部分が、まだ熱く、最初の方に焼いたところは、かなり冷めかかっている。
 冷たい道具(コテ、ピンセットなど)で、触ったところは、冷めている。
 大きな塊は、内部がまだ熱く、表面が冷め始めているが、細かい部分や細いところは、いち早く冷めて行く。
 できるだけ、温度のムラを少なくする努力をしても、完全になくすことはできません。

「温度のムラが、密度のムラに」
 温度が高いところと、低いところが隣り合っていて、そのまま固まるとすると、低いところが先にコチコチになって動かなくなり、その隣のまだ動く熱かったところの方が、同じ室温に冷めるまでの間に、より縮むことになります。
 後から冷めた部分は、先にコチコチになった部分に固められて、縮めなくなり、密度が低い状態で無理無理冷めることになってしまいます。

「密度のムラで、内部に力かかる」
 縮みたいのに縮めずに固まったところには、力が働いたままになります。
 こうした、部分による温度のムラから、密度のムラができ、密度のムラによって、引っ張り合ったり押し合ったりという力がかかった状態になります。
 この力は、ガラス内部で、ずっとかかり続けます。
 この状態を、「永久歪み」と言います。
   

2⃣ガラスが割れるということ

 ガラスのある部分に力がかかって、ある部分の強度が、その力に耐えられない時に、割れが起こります。
 最初のとっかかりの破壊が起こると、次に隣に力がかかって割れ、次にその隣と、徐々に亀裂が広がっていきます。
 というわけで、ガラスにかかる力と、部分の強度、外形の強度を、整理します。

 ❶ ガラスにかかる力

   ガラスにかかる力は、3つに分類できます。
   それぞれに、ガラスはコチコチの状態で、力がかかることになります。

➀外部からかかる力
 落とす、ぶつけるなど、外部から力がかかるというのは、大体、分かりやすく目に見えやすいです。

②急加熱、急冷された時の体積変化による力
 ガラスを炎に入れて焼くなど、急加熱すると、部分的に温度が上がり、そこだけが膨張して、周囲に強い力がかかります。
 また、ガラスがある程度熱い状態の時、冷たいピンセットで挟む、冷たい風が吹いてくる、水の中に投入するなどの急冷で、部分が急に縮み、縮んでいないところとの間に、強い力がかかります。

③内部の永久歪みによってかかる力
 熱ムラから、密度のムラができたまま固ると、密度の差が大きい部分に、より強い力がかかります。
 また、異物(ゴミ、結晶化、分相)があると、その部分だけ周囲のガラスより縮んだり、縮みにくかったりすることで、その部分に、強い力がかかります

 整理するために、3種類の力に分けましたが、内部の永久歪みで既に力がかかっているところに、さらに外から力が加わる場合や、内部に永久歪みがあるガラスを急加熱して、内部にかかった力と体積変化による力が合わさって働く場合など、複数の原因の力が同時にかかる場合が、よくあります。

 

 ❷ ガラスの中に、弱い箇所ができる

 ガラスの内側に、同じ力がかかっても、割れない場合と、割れる場合があります。
 ガラスの分子的なつながりが弱く、割れやすい状態ができていると考えられます。
 それには、いくつか要因が考えられますが、作業上、最も関係するのが、「溶着不良」です。
 それ以外の要因もありますが、それらは、簡単な説明にとどめます。

➀溶着不良

「境目の、分子の結合の数」
 立体を作る時、顔の部分に、耳を後からつけるというような場合、硬いもの同士をつけるとくっつきません。
 ある程度熱い状態でつけると、くっつきますが、どちらも十分に熱い状態と、どちらかがあまり熱くない場合や、どちらもがやや熱いくらいでついているときは、境目が十分になじんでいません。
 イメージで言うと、ガラスの分子同士が、どのくらい手をつなぎあっているかと考えるとわかりやすいです。
 馴染んでない時、境目でつなぎあっている手の数が、他の部分より少ないために、弱くなります。
 他の部分と同じだけ手をつないだ状態にしてあげようとすると、他の部分がその前に溶けていたのと同じ温度まで上がっている必要があります。
 が、きっと、一体化している部分と全く同じだけ、境目の温度を上げることはできません。何割くらい、手をつないでいれば強度は持つでしょうか?より多く、と考えるしかありません。

「境目の温度を上げる、なじむ、一体化してしまう」
 境目が、ある程度柔らかい状態になるまで、温度を上げてあげないと強度が出ない。
 一方で、温度を上げすぎると、顔に付けた耳が、ヘタってしまいますね。
 安全のためには、なじませる必要があり、立体を作るためには、なじませすぎる訳には行かない。
 この矛盾するところで、必要十分と思えるところまで焼く。
 境目に熱を与えて、他の温度はヘタらないように、温度を上げずにおく。
 そのためには、どの部分を、どんな温度にするか?そこを考える必要があります。

「面積にもよる」
 溶着の程度が、少し足りなくても、付いている面積が大きければ、持つ場合があります。
 一方で、面積が大きいと、境目の両側で密度の差による歪みが大きくなる可能性があり、その場合は、割れやすくなります。

②異物
 ガラスの中に、雲母、銅やクロムの析出、微細な気泡など、異物が入ることで、ガラスのつながりがその分少なくなり、つないでいる手の本数が少なくなります。

③失透
 ガラスが固まる温度付近では、ガラスは、ガラス質にならずに、結晶ができることがあります。結晶の方が仮に結びつきが強くても、違うものが隣り合うことで、部分に力が強くかかる原因になります。また、結晶が原因で、焼くと泡を吹くことがあり、この場合も、強度が下がります。
 ガラスが固まる温度付近で長時間の作業をすると、結晶化が進みます。その場合は、時々、結晶のできそうな部分の温度を上げると、結晶が溶けます。

④分相
 特定の色で、成分が分離してしまう場合があります。また、高温で長時間焼かれると、成分が分離することがあります。

⑤沸騰
 エアバーナーの作業では、滅多にありません。
 酸素バーナーの高温の炎で、発色剤の化合物が壊れて、泡を吹きます。
 発色剤が変質したり、泡を吹いたりと、元の状態と違う状態になることで、強度が下がります。

⑥塑性変形
 ガラスに限らず、本来の形より、強く引き伸ばされたり、曲げられたりすることで、分子のつながりが無理に引っ張られることを塑性変形といいます。これにより、部分的に、分子のつながりが切れることもあり、部分的に、強度が下がります。
 ソフトガラスの話として書いていますが。耐熱ガラスが冷めかかったときに、強めにツイストをすると、表面が曇るのは、おそらく塑性変形のためだと思います。ソフトガラスでも、目に見えなくても、同じようなことが起こっていると思います。

 

 ❸ ガラスの外形

 ガラスだけに限らず、どんな素材であっても、共通の「弱い形」があります。
 一方、どうしても熱ムラになりやすい形もあります。

「Ⅴ字谷は、危険」
 クマの顔に、柔らかいガラスで耳をつけた時、その境目の切れ込みの谷間が、なだらかな「U字谷」か、くっきりとした「Ⅴ字谷」か?
 余談ですが、クマの耳ならば、「Ⅴ字谷」は「U字谷」よりも、溶着不良の可能性が高く、その意味でも危険です。が、それを除いても、仮にしっかり一回溶着した「U字谷」に、もう一度切り込みを入れ、切込みを入れた時の急な冷めを、温めなおしたとしても。 
 「Ⅴ字」の急な切れ込みは、「Ⅴ字」の頂点のところに力が集中するという意味でも、もともと、危険な形です。
 一方、「U字」だと、なだらかな切れ込みなのでやや広い箇所に、力がかかる場所が分散されるのです。
 イメージで言うと、おやつのパックに、「切り口」が付いているのと、同じ状態です。
 同じように、一か所に力が集中してしまいやすい形があります。

「大きな塊に、小さなパーツが付いている」
 この場合、いくつかの意味で、危険です。
 全体は重く、つながっているために、小さなパーツの部分に重さがかかってくることがあり、危険です。
 また、冷める際に、小さなパーツは早く冷め、大きなパーツはゆっくり冷めるために、この境目より少し小さなパーツに側に寄ったところに、熱ムラによる歪みが、起こりやすくなります。

「球体以外の、凹凸のある大きな物」
 球体は、比較的熱ムラが少ない状態で冷めますが、それ以外のものは、熱ムラができやすくなります。
 熱ムラができた場合、大きなものは、歪によって力かかかる範囲が広いため、部分の力のトータルが大きくなります。その力が、ガラスの中を伝わって、弱い箇所にかかると、割れにつながります。

「網目は、意外と丈夫」
 上のケースと比べて、網目の場合、どこかが極端に冷めおくれるなどの熱ムラが少なく、また、熱ムラによるひずみがあったとしても、歪の範囲が狭くなるので、かかる力が小さくて済みます。
 網目のつながりに「Ⅴ字谷」を作らなければ、どこかに力が集中しやすい状態を割けることもできます。

3⃣割れないための対策「徐冷」と「溶着」

 ガラスが割れる要因を、先に色々分類しましたが、その中でも、まず気にする対策があります。
 有名なのは、「徐冷」と「溶着」です。

  ❶電気炉徐冷

 ガラスには、「徐冷点」という温度があります。(測定によって、割り出してあります)
 ガラスの外側は形が崩れず、内部は分子レベルではわずかに移動できる温度域の中で、やや高めの温度がそうです。
 この「徐冷点」という温度で、15分(大きさによって違う)キープすることで、熱ムラをとります。(アニールソーク)
 「徐冷点」から、「歪点」という温度に下がる時、さらに温度が下がる時、まだ、ガラス内部では、分子レベルで移動できる状態です。熱ムラを一回取った後、新たな熱ムラをできるだけ少なくするために、「歪点」までは(実際にはもう少し低い温度まで)、ゆっくり温度を下げると安心です。(アニールクール)
 アニールクールの後も、急冷による体積変化を避けるために、電気炉から取り出すのは、室温に戻ってからです。

  ❷溶着

 溶着不良にならないよう、二つの部分をくっつけた境目が、一定以上の温度になるように、しっかりと温度を上げます。
 くっつける前に、それぞれくっつける場所をあらかじめ焼いておいたり。
 硬いところに柔らかいガラスをつけた時、柔らかいガラスの方から、強めに焼くことで、硬い側に熱を伝えるようにやいたり。
 ソフトガラスの場合、くっつけた個所の境目が、「V字谷」から「U字谷」になるくらいを目安に焼くことが多いです。

  ❸焼き戻し

 作業上、大きな熱ムラができている時、熱すぎる部分はほどほどまで冷ましつつ、冷めている部分を程よく温めるために、冷めている個所を、遠火でじんわり温めます。
 温度の高いところと低いところの温度差が大きく、近い距離で隣り合っている(熱勾配が大きい)場合は、そのまま冷めると、内部に大きな永久歪みが残ります。
 温度の差が小さくなるように、狭い部分に温度の差が集中している場合は、やや広い箇所に温度の差を散らすように、焼き戻します。

 

4⃣二つの作り方

 立体を作る場合、温度の面から見て、2種類の作り方があります。
 ❷の作り方は、イタリア人のマエストロがするやり方で、大きなものを作る時などには便利ですが、❶より難しいと思います。

❶温度を、中間の温度より、下げない作り方

 厳密には、細かい部分は、コチコチになっている可能性はあります。
 コチコチになっても、もう一度温まって割れないごく小さな部分は、大丈夫です。
 一方、一旦コチコチになってしまうと、再度温めようとしたら割れてしまうような一定以上大きな場所の温度を下げ過ぎないで、時々温めながら、温度が下がり過ぎないように、キープしつつ作る方法です。
 固まっているようでも、内部的にはわずかに動く中間の温度をキープします。
 

 形は崩したくない、けれど、冷ましたくない場合、中間の温度のできるだけ高めの温度に上げておくと冷めにくくなります。
 ただし、温度が高すぎると、柔らかいガラスで点を打ったときなど、柔らかいガラスの温度に引きずられて、中間の温度から柔らかい温度に温度が上がり、境目がヘタってしまいます。
 中間の温度でも、もう少し低めにキープしないと、作業が難しい場合があります。

 この作り方で作った場合、大きなものは、電気炉で徐冷します。
 この時、完成品は、「徐冷点」もしくは、「徐冷点よりやや低めの温度」の電気炉に入れます。その後、「徐冷点」で、必要な時間キープし、徐冷します。

  ❷作業が終わった場所の温度を下げて行く作り方

 立体を端から順番に作っていく場合など、作業が終わった個所を冷ましてしまう作り方があります。
 一定以上大きな箇所であれば、冷ました場所を、間違えて温めると割れてしまいます。
 また、冷めるときに、熱ムラが大きいと冷めることで内部の歪みに大きな力がかかって割れるため、冷ます前には、「大きな熱勾配」が残らないように、焼き戻しておく必要があります。
 例えば、カブトムシなど、大きな体を先に作り冷まし、その先端に細い足をつけたい場合、冷ました体を温めると割れてしまいます。
 体を冷ます前に、足の立ち上がりになる、小さな突起をつけてから冷まします。
 突起の部分だけであれば、本体に大きな熱が伝わらないように温めるならば、もう一度温めることができます。

 作るものの大きさや形により、大きなものに突起をつけて冷ました状態で、一度電気炉に入れて、徐々に「徐冷点」まで温度を上げて「徐冷」し、冷めてから足をつけ、すべてが完成してから、もう一度電気炉に入れてゆっくり温め、「徐冷点」で、徐冷するなど、途中と、完成後に歪を取ることが多いです。
 特に大きなものの場合、このように、何度か、全体の歪を取りながら作業します。

 

5⃣熱のシミュレーションをできるようになろう

 割れないためには、いろいろなことを考える必要があります。
 急加熱、急冷をしない。
 大きな熱勾配を作らない。
 作業中、不用意に冷ましすぎない。
 しっかりと溶着する。
 などなど。

 ところで、言葉で書けばシンプルながら、実際の作業では、熱勾配が大きいかどうか?冷ます過ぎてはいないか?溶着できている温度なのか?そういうところを、作業中に判断できないと、実際の作業はできません。
 そのために、必須なのは、熱のシミュレーションができるようになることです。

 熱い時、柔らかいので、垂れる様子は、目で見て分かります。
 とんぼ玉を巻く場合などなら、柔らかいとガラスが動くので、動きがステンレス芯を通じて伝わってきます。
 生卵を振ったときと、ゆで卵を振ったときの感じ、と言うことがありますが。
 同じように硬くても、わずかにガラスの色が黄色いと、まだ暖かく、黄色みが消えてくると、冷めてきています。

 大きなガラスの塊は、熱の持ちが良いので、焼けるのも、冷めるのも、時間がかかり、小さなガラスは、すぐに温まってすぐに冷めます。
 この時間の感覚は、経験値で、体が覚えます。

 こうした感覚は、どうしたら身に着くのか?
 ガラスを触ること、そして、コントロールの上手な人の作業を見て覚えることだと思います。

 とんぼ玉教室を始めて、10年以上になりますが。
 最初は、痛いくらい、ヘタでした。
 立体は、なかなか、課題に取り入れる自信がありませんでした。今も、様子を見つつ、何度も試作してみます。まだ、失敗も多いです。
 もともとは、とても理論派です。
 ガラスを始めて、上達しようと思っていた時も、見て覚えるのはどちらかというと人よりも苦手、それを理論で補ってきたタイプですが。
 でも、見て覚えるのは、外せない方法だと思います。

 立体を作る時、キャリアのある生徒さんを見ていると、なんか、割れない気がします。
 キャリアが少ない生徒さんは、なんか割れそうな気がします。
 どこを見てるのかな?って、自分に問いかけてみました。
 そう思えるポイントを、いくつか挙げてみましょう。

①温めるとき、手回しがちゃんとできている
 つまり、どこをどれだけ温めたいか、よく分かっているということだなあと思います。
 回してまんべんなく温めたいとき、手が止まっていると、まだ、どこを温めたいか、明確に分かっていないんだなあと思います。

②ポンテの芯が取れている
 回転しながら作るものは、重さが偏らないように、ポンテのを取る時、回転軸をしっかり合わせます。(私の場合、ムリー二を作る時は、かなり重心が偏った強引な付け方をしますけど。)
 慣れによる上手下手はあるものの、しっかり芯を合わせると、温めるときに、均等に回転して温めることができるなど、温度のコントロールが格段にしやすくなります。
 その重要性を、重視しているか、軽く考えているか、そこにも、温度が見えているかどうかが反映されている気がします。

③硬いところを長時間触ることをしない
 温度が良く見えていると思います。
 もう触っても動かないところを触るというのは、温度が見えていない。
 冷めて硬いところを触り続けると、割れるリスクも高まって来ます。

 ④焼き過ぎない
 ガラスは、焼き方が足りないと、硬くて動きません。
 かといって、良く焼けばいいのかというと、違います。
 ガラスは、焼くと、形が崩れ、まるくなろうとして縮みます。
 必要十分な温度に焼けている。もしくは、焼こうとしてる。

 他にも、いろいろな部分で、ああ、ガラスの温度を見ているなと感じる作り方になれば、かなりのものです。
 もうちょっと、難しいところにチャレンジしてもらおうかなあなんて、実は、背後で考えていたりするのでした。

 人間は、人の作業を見ている時、自分が作業しているのと同じ個所の脳が、「発火」しているんだそうです。
 生徒さんが、ステン棒をくるくる回すのを見ながら、私の脳みそも、ステン棒を回すところが、同じように働いているんだそうです。
 運転する人が、助手席に乗っていて、ブレーキを踏む感じですかね。
 タイミングが違うと、「あ、今なんや」って、ガクッとする。
 そう思って、作業を見ます。
 理論ではなくて、作業を見ることで、脳の同じ個所が発火するのです。
 手が空いているときは、できれば、「デモやってください」って、貪欲に来て欲しいです。
 で、私の目線と近い位置から見える場所で、穴が開くくらい見て、タイミングを盗んでくださいね。
 その時、目に見える手順だけでなく、見えない温度も、意識して見てください。

 

6⃣ まだまだ、続く?ガラスの話

 書いていて、ああ、まだ、いろんな話が書けるなあと思いました。
 長くなると、分かりにくいので、ざっくりとした話として、書いてみました。
 図を描こうと思ったんですが、そこまでしていると、いつまでもアップできないので、暫定的に、文章のみのアップにします。

 ガラスを触る時に、どこまでも理詰めである必要はないと思います。
 上手な人が、理論派かというとそうではないし、理論派だと上手かというと、そうではない。
 じゃ、何?って話ですが。
 いろんなものを見ていて、理詰めに説明するのは、個人的な趣味です。
 だって、面白いんやもん。
 いろんなことの背後にある、理由を探るのって。

 ガラスを見ながら、いや、他のものを見ながらでも。
 熱容量が大きいとか、小さいとか、そんなことを考えます。
 滅多にしない手抜き料理を作りながら、材料の温度を上げないために、自分の手で触らずに、熱容量の低そうなお箸を使って作業をしたり。
 予熱しておいたフライパンから、素早く熱を移すのに、お野菜の量は、どのくらいが限界かな?とか考えます。
 また、そんなとりとめのないガラス話、書いていこうと思います。
 よろしければ、お付き合いください。

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