「秋の銀河」と、「ユニステラ」

 さて、マニアックなお話です。

 観望会前半では、一般の方と一緒になゆたでの観望会ですが。

 後半の友の会の観測では、3択です。

 ➀なゆたで火星を撮影

 ②60センチで秋の銀河を見よう(定員5名)

 ③外で写真撮影など

 

 迷わず、②を選んだのですが。

 後で聞くと、③も捨てがたかったな。

 次回のプログラムでも、②の60センチで秋の散開星雲を見ようが良いけど。やっぱり、晴れたら③の外での撮影も良い。

 ただ、私の場合は、パワーショットなので。一応、コンデジとしては、一番天体観測向きです。

 それでも、空が良いと、コンデジでも良い空撮れるし、地元ではそれがムリやもんねえ。悩む。

 

 という訳で、秋の銀河三昧です。

 M31、M32、M110のアンドロメダ座の大銀河とその伴銀河。

 M33三角座のフェイスオン銀河。

 くじら座のM77、うお座のM74。

 NGC253、NGC247。

 おおぐま座のM81、M82。

 後いくつか見たんですが、覚えてない。

 最後に、おうし座のM1超新星残骸と、M42オリオン座大星雲(散開星雲)を見て、終了しました。

 詳細は省きますが。

 まあ見えない!

 うっすらぼんやりとしか見えない!

 60センチ望遠鏡なので、うっすらぼんやり見えるんですが。

 もちろん、もっと小さな望遠鏡ではもっと見えない。

 が、その見えないのを、「何か、何か分かるような」って見るのが良い。

 だって、本来は見えないはずのものを、やっとやっと60センチでとらえられる訳ですから。

 それでも、NGC253と、M82は、割とくっきりと見えました。

 こういうのを、エッジオン銀河というそうで。

 つまり、横向きの銀河を見ているので、縁の方がこっちを向いている銀河だから、エッジオン。

 その方が、濃く見えるようです。

 一方、フェイスオン銀河というのは、顔をこちら向きに向けている銀河で、M33や、やや斜め向きながら渦巻に見えるM81などは、本当にぼんやりとした雲にしか見えず。

 どれだったか、確かに微かに渦が見える感じはしました。

 あまりにぼんやり続きですが、5名限定で、見えないのを見たい変な人が集まっているので、それなりにエエ感じって思ったんですけど。

 やはり、見せてくださる側になると、少しサービスってことで、他のものを見ました。

 M1かに星雲。

 これは、清少納言の枕草子にも、明るい星が現れたと記述があるという超新星で、次第に暗くなっていったものが、かに星雲です。

 図鑑でよく見ていたので、見てみたい!

 双眼鏡では見えないんです。

 ああ、うっすらと、確かに図鑑のような形に靄が広がってるやん。そんでもって、一様ではなくて濃淡があるやん!

 ああ、こんなに見えないのね。って、見えないものを必死に見ていた変な人たちです。

 ああ、M1でもあかんなあってことで、最後にM42オリオン座の大星雲を見ました。

 目視でも見える星雲です。

 オリオン座の三つ星が、オリオンの帯で、その左下に小さな剣を下げているのが小三つ星(こみつぼし)です。

 この小三つ星の真ん中が、本当は星ではなくて、明るい星雲のオリオン座大星雲です。

 やっぱり、60センチで見ると、明るい。

 真ん中に、四角く並んだ星トラペジウムが見えます。

 ああ、見えにくかった!

 でも、大満足です。

 

 さて、会のお開きの時に、外の観測の様子を聞きました。

 Mさんが持って来られた「ユニステラ」という望遠鏡で、いろいろ見られたんですって。

 ああ、見たかった!

 2カ月前は曇りだったので登場の場面がなく、望遠鏡だけを見せてもらった。

 今回はチャンスを逃してしまった!

 Mさんを呼び止めて、また機会があったら見せてもらえますか?って言うと、前回、連絡先を渡していたので、お昼の内に電話をくださっていたのに、取れてなかったことが分かり。

 着信入っとるやん!

 もう大失態!泣く!

 Mさんは、日帰りなのでもうゲートを出ないと帰れなくなってしまう。

 ゲートから車を出して外の駐車場に機材を出すかも知れないから、出すにしても帰るにしてもご連絡しますって仰ってくださって。

 で、また私の電話は、設定がおかしくて鳴らなかったのですが、折り返して連絡がつき。

 ゲートから500メートル下ったところまで歩いていき、Mさんたち3人と合流。

 

 そこで、ユニステラで星を探しました。

 まずは、オリオン座大星雲M42。

 60センチより視覚が広いので、全景に近いです。

 ユニステラは、本来人が覗く焦点の位置にカメラが付いていて、ライブモードだと目視に近い物の、しばらく待っていると、複数の画像を撮ったものをリアルタイムで合成して、それをwifiだったかブルートゥースだったかで、スマホやタブレットに飛ばしてくれるし、覗けるようになったところにも液晶が付いていて、覗いて見ることもできます。

 Mさんのスマホに、最初はぼやけて潰れたような何となくM42が写し出され、待っていると、合成が進んで、最初は少しの光で取れた画像を無理に明るく見せていたものを、徐々に光をたくさん集めて像がより精細に出せるようになって、明るかった画像を適正露出に補正したものへと変わって行く。

 徐々に、きれいな階調表現の繊細な星雲の濃淡が見えて来る。

 うわ~!

 この徐々に光が集まって来ていますよって感じが良い!

 物理学的に言えば、光の粒子性をユニステラを通じて感じられる瞬間。

 そこにある天体を、こうやって捉えられる。

 良いわ!

 馬頭星雲をリクエストしてみた。

 Hα(エッチアルファ)という波長の赤い星雲が主なので、普通のカメラやユニステラのセンサーは、敢えて拾わずにカットしているので、写りにくい。

 この赤い色は、水素原子が出す光なので、宇宙空間には水素原子が多く満ちているので、元々は多い光なんですが。

 私たちの日常では、この色の光はほとんどないため、カットした方がきれいな写真が撮れるらしく、普通のカメラでは写らないんです。

 相当待っていると、うっすら赤い靄の中に、馬の首のシルエットが少し見えて来る。

 は~、ホンマに見えにくい星雲なんやなあ。

 あ、馬頭星雲は、キャプテンハーロックなんかにも出てきましたね。

 他にも、ランニングマン星雲(ランニングマンには見えない)とか。

 あ、そうだ!さっき見せてもらった、クジラ座のM77とかは?

 って見せてもらったら、明るく潰れた小さな楕円が見えて、みんなでがっかり。

 でも、それでよかったみたいなんです。

 我慢して待っていたら、きっとその周りに、薄い渦巻が見えてきたはず。

 明るくつぶれた小さな楕円は、星がにじんだのではなくて、本当に真ん中のバルジが楕円形で、バルジがすごく明るいセイファート銀河の代表的なものだったらしいです。翌日の小倉専門員の天文講演会で、小倉さんの好きな銀河3つとして、M77が登場しました。

 その後、Mさんの二人の連れの内の女性がリクエストしたNGC891を。

 これは、見えましたね。

 きれいなエッジオン銀河で、真横から見ていて、真ん中に黒い線が入っている、薄いどら焼きみたいな形。

 本当にきれいな銀河でした。

 と、Mさんが日帰りなので、ここでお開き。

 すっごく満足。

 すっかりユニステラのファンになりました。

 Mさん、本当にありがとうございました。

 

 「生」じゃなくて「写真」を見ている訳だから。

 最初は、私もそう思ったんですけどね。

 きっと、60センチの見えない感も良い。

 そして、ユニステラの、徐々に浮かび上がってくる感じも良いと思うんです。

 以前に、マブール島という島で水上コテージで現地で相部屋になったカメラ派の女性ダイバーさん(というといかつく思えるけど、おっとり感のある小柄な人でした)が、言ったんです。

 マクロレンズを介して覗く世界が好きだって。

 自分の目では見えない世界が見えるって。

 確かに。

 マクロレンズを通すと、近くて小さなものが、わっと拡大されて、小さなものが大きく見える。

 そして、絞りを開放すると、ピントが狭い範囲に合って背景をぼやけさせることができて、見せたいところを強調した写真を撮れる。

 そういう世界は、人間のレンズと網膜では見えてこない。

 マクロレンズのレンズ構成が、自分の目には見えない世界を見せる。

 それまで、所詮、写真は、リアルなものをそのまま移し取るだけのものだと思っていた。

 違うんだな。

 間を、人間のレンズとは違ったレンズという機器を介し、当時はフィルム、今はセンサーで、人間の網膜と違ったものを再現する。

 撮る人の出会う瞬間、切り取る世界、使う機材で、人間の目がリアルだと思って見ている世界と違う世界を見せてくれるものなんだと思った。

 人の目の限界を拡張した表現の世界だって。

 ならば、望遠鏡だってそうだ。

 そして、ユニステラは?

 ユニステラには、時間が積み重なる。

 

 遠くの星を見る時、より見たいからこそ、大口径のレンズで、光をたくさん集めようとする。

 地上のポートレートでは、たくさんの光が飛び交う世界なので、そんな風には思わないけれど。

 遠くの遠くの宇宙の天体が四方に発した光が、こっちに飛んできた時、全方向に飛んでいる光の内、角度にしたらほんのわずかな方向の飛んできたものが、受けているレンズに達する。

 少なすぎて、一つ、二つと、光の粒子を数えられるくらいわずかだ。

 反射鏡を大きくすると、飛んでくるものを受ける確率が増える。

 それをセンサーに集めて、センサーの一つが、光が来たよ、また一つ来たよって、反応する。

 反射鏡を大きくしても限界がある。

 だから、目標の天体の動きに合わせて反射鏡が目標の天体星を向くように追いかけながら、時間をかけると少しずつ光が溜まって来て、真っ暗だった画面に光が浮かび上がって来る。

 反射鏡で稼ぐのか、時間を待つことで稼ぐのか。

 人の目では、そんなに大きなレンズで受けることもできないし、一瞬一瞬しか見ることができない。

 時間軸方向に、光を集める機能を拡張した物。

 それがユニステラだ。

 カメラでの写真撮影後に、コンポジットという合成をすることで、明るいところはより明るく、暗いところはより暗く、たまたま入ったノイズは取り除いてクリアーに仕上がって行く作業が入るのですが、それと同じことをしていて、しかも後日ではなく、その場でやっている訳です。

 徐々に、精細に浮かび上がって来る感じは、その、光を一つ二つと数える感覚を、強く感じさせる。

 量子力学の世界を、目の前で垣間見ている。

 震える。

 もしかしたら、こういう物が、この先、一つのスタンダードになって行くかもしれないと強く感じさせた。

 

 例えるなら。

 イチデジやミラーレスは、マニュアル設定で撮らないと撮れないような、自動設定には最適な撮影条件を設定されていないような、ニッチな対象を撮るにはこの先もずっと必要な物だと思う。

 でも、ポートレート、風景、花火と人を一緒に撮るなど、多くの人が撮りたいと思うものの最適な条件をいくつか設定していて、その中から選択すれば、マニュアルで撮るよりもきれいな物が撮れる機能を備えたスマホカメラが、相当数使われている。

 そういう、オートのカメラと、マニュアルのカメラ。

 車で言えば、オートマ車かマニュアル車か。

 

 ユニステラは、設置するだけで初期設定を自分でやる。

 見えている星空を、内部に持っている星空データとマッチングして、今どっちを向いているかを検出して、初期設定を終える。

 後は、見たいものの赤経赤緯という、星空の座標をユニステラに飛ばしてあげれば、自動導入できる。

 ユニステラのコントロールのためのアプリは、有名な天体は、座標ではなくて名前で選べば座標をユニステラに飛ばしてくれるようになっている。

 しかも、アプリは、ユニステラ本体とは別なので、アップデートをかけていくことができる。

 この基本設計がもう完成しているので、この先、もっと大きな反射鏡を使うとか、カメラ性能を上げて行くとか、仕様を変えることができたら、もっと選択肢が広がって行く。ただし、その場合は、もっとしっかりした足場が要ると思うけど。

 今回は、Hαが撮れない仕様だけれど、そのうち外したものも登場する可能性も高いだろうなって思う。

 今はまだ、目視派は抵抗しているだろうけど。

 きっと標準になって、もっと一般化すると思う。

 でも、無くならないよ。

 見えない、見えない、そういう変な志向で楽しめる、目視の世界も。

 マニュアル車や、マニュアル撮影のカメラが無くならないように。

 

 ああ、本当におなか一杯。

 大満足。

 

 あ、Mさんと合流直前で、撮影の邪魔にならないように懐中電灯を消して歩いていて、電話で話してMさんを見つけた時に、足元の溝に気付かず右足が墜落して転倒。

 右ひざ強打。

 そばにいた見知らぬカップルに、助け起こしてもらいました。

 Mさんたち3人にもご心配をかけましたが。

 打撲で立膝できないけど、結構平気だし、こんな時はか弱い女子にあこがれた骨太がものをいうらしく。ただの打撲で済んでます。それに、もうそんなに痛くないです。

 宿舎に帰って着替えた後、ダウンを着込んで、グランドから双眼鏡で星を見ました。

 だってもったいないもん。こんなにきれいだし。

 そしたら、けっこう近くで獣の声。

 キツネと鹿の声は分かる。違う。

 何か分からん。

 イノシシ?クマ?

 それとも、新月でワラワラ集まって、お外で楽しく騒いでいる若者?

 わ~!

 って、宿舎に走って玄関をくぐってホッとして、で、寝ました。

 年と共に、人は変わるらしいけど、どうにも、この手のお子様なところは、おばちゃんになっても変わりません。

 でも、きっと、それは楽しいことだ。

 

 翌日の天文講演会の話は、また長くなりそうなので、また後で、別にします。

 ホンマに三部作。

 

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