「天文講演会」と「サイエンスゼロ」

15日(日)の4時半から始まる天文講演会を聞くべく、西はりま天文台の北館で粘っていました。

 午前に、道の駅でピーナッツを買い、あらかじめ買ってあったローソンの糖質制限パンでお昼ご飯をささっと済ませた以外は、篭ってました。

 母のマフラーを毛糸半玉分くらい編み。(母が3玉半編んでいたものを、今年の冬に使えるように私が急ぎ編んでいるところです)

 やっぱりせっかくなので、北館のリファレンスルームにおいてある本を、ちょこちょこ見せてもらうことに。

 が、もっとじっくり腰を据えないと、読めないというか。

 スマホの充電器を忘れて電池の残りが心許なかったので、分からない用語などをスマホで検索できないんですよね。

 電卓とかもあった方が良いし。

 その中でも、分かりやすい本があったので、ちょこちょこ見ていました。

 天文学の用語辞典みたいな本だったのですが、出版が最近で、素粒子なんかに関しても、ざっくり書いてある。

 素粒子、分からないんですよね。

 ここ30年で、どんどん変わって来ていて、概論だけで良いので、誰か教えて~!

 というのも甘いので、時々、思い立った時にちょこちょこ見てみるのですが、なかなかねえ。

 

 で、その本の中に、宇宙の膨張モデルでは、最初はビッグバンから始まり、最初は一点であったという説ですが、それでは物理法則が破綻するので、ホーキングなんかが、点ではなかったという説で説明しているらしいことが書かれていた。

 実際には、膨張はしているけれど、そこを遡ると点なのか点でないのか、そういうことも、今後の天文学の観測によって、次第に明らかになって来るのかも知れませんが。

 ふ~ん。

 

 さて、そんなこんなで。

 その前に、昼間の星の観測会で、60センチで、こと座のベガを見せてもらった。

 へ~、青空の向こうに、ベガが見えている。

 そういうことか。

 空気中に太陽光が散乱して、青い空が見えている。

 それでも、それは不透明ではないので、その向こうに明るい星は微かに見えるんだ。望遠鏡を介して見れば。

 

 という訳で、天文講演会です。

 小倉専門員という、若い専門員の人で、今年の4月に赴任。

 コロナで閉鎖中、山火事で非難、緊急事態宣言、敷地内の落雷でなゆたの電気系統が故障、と、イレギュラーな日々から始まったそうで。

 これは、しばらくはネタにできるで。

 関西人としては、おいしいというしかない!

 中学卒業まで兵庫県にいて、その後進学や就職で他県を転々とし、16年ぶりに兵庫県に帰って来ましたということで。

 そうか~。

 大学卒業まで天文少女だった私が、大阪に就職したのと同時に(実家周辺でも街灯が明るくなったこともあって)天文から離れてしまったのが、32年前。

 その直後に、生まれた人やな。

 私が知らなかった時間の天文の世界を見てきたわけですよ。

 変な感慨。

 その時代に、天文学は、とても進歩していたから。

 

 

 さて、天文講演会「広い範囲の観測が大事!~理論モデルと広視野探査観測から見る宇宙の構造」です。

 小倉さんの研究がどんなものなのかっていう話ですね。

 

 その前に。

 宇宙を覗いた時、広すぎて、遠くの天体が遠すぎて、光が地球に到達するのに、何年も、いえ、何万年も、というか一番遠くの天体として見つかっているの物に関しては、130億年もかかって地球に届いているのだそうです。

 近くのものだと、太陽からの光は、地球に到達するのに8分20秒かかるそうです。

 なので、より遠くのものを見た時、もっと時間がかかっている訳で。

 一億光年離れた天体の姿は、一億年前の姿です。

 宇宙は生まれてから138億年が経っていると考えられているので、130億光年向こうの天体の姿は、130億年前の姿ということになる。

 つまり、どんどん遠くの天体を見ることによって、宇宙の過去の姿が見えて来るということなのです。

 なので、うんと遠くの方に銀河があれば、その銀河は、比較的宇宙ができてから時間が経っていない頃の銀河だということになります。

 小倉専門員の研究は、この宇宙ができて、宇宙や銀河などができてから時間が経過するとともに、どんなふうに変化してきたのかという銀河の進化なんかを調べているんですって。

 

 宇宙の広い範囲を見た時、宇宙の天体は満遍なく広がっているのではなくて、濃いところと薄いところのムラがあって、濃いところが繋がって網目のようになっていると言われています。

 最初できた時は、ほぼ一様だったのに、ごく僅かに濃いところと薄いところがあって(「ゆらぎ」があるというらしい)濃いところは濃いところ同志、引力で引きあってより濃くなり、すると濃いところに集まった分、薄くて何もないところもできて来る。

 その濃い部分が、ちょうど網目のように、またはシャボン玉の泡のようにせっけん液が固まっているところと空洞になって何もないところがあるような、泡状構造とか言われています。

 今回のお話は、主にこの泡状構造の話で。

 本当に遠くの古い時代の宇宙では、濃いところと薄いところがそんなに顕著に分かれていなくて、地球に近づくに従って、つまり現代に近づいていくにしたがって、濃いところはより濃く、薄いところはより薄い、鮮明な感じの網目、または泡状の構造になっていることを、東大のすばる望遠鏡のプロジェクトが確かめているのだそうです。

 そういう全体的な構造ができていくことが間違っていなければ、そういう環境の中で、銀河が生まれて、衝突して大型化して、みたいな、銀河の進化をも考えることができる。

 前回の例会の時の話では、小倉専門員は、ガスの中で最も恒星が盛んに生まれていた時期のガスの研究をしているって仰っていたなあ。

 今回は、天文学では、宇宙の大規模構造がどうなっているのかを調べていますよっていう、広いお話。

 そういう大きな背景を前提にして、その宇宙の中で、銀河の進化であったり、ブラックホールであったり、星間ガスの組成であったりと、いろんな人が宇宙がどんな風に変化してきたかを、いろんな角度から調べている。

 

 泡状構造が鮮明になって来ていることを調べているのは、ハワイのマウナケア山にある、東大の「すばる」望遠鏡なんだそうで。

 普通、一つの天体を見るときは、結構倍率を上げて狭い範囲を見るイメージなのですが、すばる望遠鏡が撮影する一枚の写真は、結構広い範囲を撮影していて、大体、月9個分くらいの範囲を撮っているそうです。

 すばる望遠鏡で、結構な倍率で天体を見るときは、望遠鏡の一番奥にある主鏡で光をとらえて前方に反射して、望遠鏡の先端の鏡でもう一回奥の方に反射して、主鏡の真ん中に開いている穴から、何倍にも拡大された天体の像を見る、2回反射しているんですが。

 大規模構造を見るために、望遠鏡の先端部分に反射鏡ではなくてカメラをつけて、あまり高倍率にしないで広い範囲を撮影しているそうです。つまり、主鏡の部分で1回しか反射していない光をカメラで撮っているということです。

 このカメラ、以前からついていたものを、S-Camと言っていたのが、もっと広い範囲が撮れるしかもカメラそのものの光を集める性能もよくなったものは、ハイパーS-Cam(HSC)というんだそうです。

 

 その日、帰ってからサイエンスゼロを見ていると、まさに、その「すばる」望遠鏡で、HSCを使って広い範囲の撮影をしていますよっていう話だった。

 つまり月9個分の範囲の写真を、330枚撮影することで、それをつなげてパノラマ写真のようにしてしまおうというプロジェクトと、紹介されていて、番組取材時には、297枚目を撮るところだった。

 330枚は、全天を撮るのではなくて、すばる望遠鏡から見て撮りやすい方向を撮っているようです。

 地平線付近は、光が地上の空気の中を長距離通って来るのであんまりちゃんと撮れないのは天体観測一般みんなそうなので、すばるも上空を狙ってるようです。

 また、天の川周辺は、近くの明るい星が多すぎるので、遠くの宇宙を撮るのの邪魔になるので、撮影範囲から外してあるようです。

 すばるが撮りやすい高さのところを、季節を一回りして撮ると、本当にパノラマ写真のような細長くつながった範囲が撮れるということのようです。

 もちろん、宇宙の遠くは、どこを見ても似たような構造のはずなので、全天でなくて、撮りやすいところをできるだけ広く撮ろうとしたらこうなったって感じですね、きっと。

 

 小倉専門員の講演によると。

 この実際の観測からわかる網状(泡状)構造と、シミュレーションによって最初は満遍なく広がっていたガスなどが、時間とともに濃いところはより濃く薄いところはより薄くなるという結果が、一致しているか確認してみると、ちゃんと一致しているので、理論は間違っていないようだということが確認されたそうです。

 その確認方法というのは、銀河の個数密度から作られた光度曲線というものがあって、いろんな場所の銀河の個数密度が、光度曲線から外れていないことを確認するという方法で行われている、そうで。

 何のこと~?って話ですが。

 「すばる」望遠鏡で撮った画像に写っている銀河を数えて、えいや!と、範囲を決めてみた時に、どの範囲をとって見てもおおよそ、小さな銀河(暗くて小さい銀河)が、たくさんあって、大きくなる(明るくて大きな銀河になる)につれて数が減って行くという、大きな銀河、中くらいの銀河、小さな銀河と、いろんなサイズの銀河の個数の比率が、大体同じ感じになっていることを確認しているのだそうです。

 えいや!ここら辺!ってとる範囲が狭いほど、曲線から外れるけれど、広い範囲を撮れば、ほぼ、曲線と一致する。

 なので、まあきっと、この実測で、このサイズの銀河がこのくらいありますよという観測結果は、きっと正しいといえることを確認できたっていうお話。

 でした。

 

 で、一つ衝撃だったのは。

 昼間の星が、青空の向こうにあるから見えないのと一緒で。

 星を見上げた時、星と星の間の黒いところには、何も見えてはいないのですが、「すばる」で撮ると、ずっとずっと遠くの天体が、無数に写し出されています。

 いっぱいあるのは、「銀河」なのです。

 こんなにびっしりと、「銀河」が空一面にあるのですが、私たちには見えていない。

 すばるの目を通せば、見えてくるのです。

 銀河と言っても、小さい物は、楕円銀河と言って、渦を巻いてはいませんが、ぼんやりとした光の塊に見えています。

 

 小ネタですみません。

 宇宙物の作品を作る時、銀河を作った背景には、「星がたくさん」を、背景にはできないって書きました。

 星々は、私たちの地球の比較的近くに浮かぶ恒星たち。

 銀河はその向こうにある。

 そしたらその背景は?

 無数の点、無数の銀河を背景に入れると正解です。

 輪郭は、恒星と違って、ちょっとぼんやりした感じが良い。

 よし!解決!

 って、脱線しましたね。

 

 概論だけではなくて、どんな方法で観測しているのか?っていう説明が入るのが、ちょっと、リアルな感じがして良いですね。

 本当に、理系の研究は、どういう実験、どういう観測という、方法論を考えて、その方法論が本当に正しいのか検証してという部分が、とても重要になって来る世界なのです。

 与えられた観測機で何かを測るって感じではないんです。

 

 天文学では、初期には小さな銀河だったものが、寄り集まって大きくなって行きみたいなざっくりした宇宙像が、今言われていて。

 素人の私から見ても、最初の宇宙は、ほぼ一面にまんべんなく広がるガスから始まったとか、銀河の衝突の話とかを聞くと、最初の銀河は小さくて、寄り集まってどんどん大きくなり、寄り集まるっていうのが衝突などのできごとだったりすることや、衝突や近くをすれ違って引っ張り合ってみたいなことが起こることで、渦を巻いて行くんだろうって、何となく思う。

 でも、「何だかそんなことらしい」で終わらず、いろんな観測によって、そういうストーリーを、ち密に確認していく作業をやっているんですよね。

 そうやって裏付けることで、まだ分かっていないことを知るきっかけが見つかるかもしれない。

 誰かが、今までに確認された宇宙像を見て、今はまだ良くわかってない謎を、直感的に説明できる理論を作るかもしれない。

 そうすれば、また何らかの方法で、その理論を裏付けて行く。

 一つ一つは、地道過ぎる作業ですが。

 それが積み上げられて、もっと宇宙の成り立ちのストーリーが見えて来ると、とてもエキサイティングです。

 宇宙は、地上と比べてはるかにスケールが大きく、大きなエネルギーが渦巻いている世界なので、宇宙を見ることで、素粒子物理や量子力学などの、基礎物理の理論との矛盾が見つかったり、今の理論でしかないものの裏付けになる現象が見つかったり、ということも起こります。

 宇宙のなりたちだけでなく、物理の基礎的な理論の発展にも役立っている物のようです。

 そういった、基礎的な理論が確立していくことで、まだ、予測もつかない実社会での恩恵に繋がるかもしれないと思います。と、一部は本当、一部は、日常生活に役に立たないといわれることへの言い訳のように、書いてみる。

 でも、何でやっているのか?と聞かれたら、未知なるものを知りたいという、素直な人間の本能なんだと思う。

 近くで、その空気感を感じられるだけでドキドキします。

 でもちょっと、そこに加われない寂しさも。←厚かましい!

 

 個人的に今知りたいのは。

 私たちの銀河中心にある巨大ブラックホールが、いつ、どうやって誕生したのか?

 銀河ができて、その真ん中に出来たのか?

 ブラックホールがあって、その周辺に多くの物質を引き寄せたのか?

 っていうことが一つ。

 

 もう一つは、棒渦巻銀河は、どうして棒渦巻なのか?

 私たちの銀河も、棒渦巻銀河と言われています。

 宇宙には、渦巻銀河でも、真ん中のバルジが棒ではない銀河もあって。

 おそらく、渦巻銀河よりも、棒渦巻銀河の方が後から登場した、最新の状態の銀河ではないかと言われているそうで。

 ですよね。

 私たちの銀河は、一番近いというかその中にいるんだから、この銀河の形が現代の状態な訳で。

 遠くの銀河は、今は、楕円銀河という渦を巻かない銀河に見えていても、ずっと遠くにあるから、楕円銀河という姿が過去のものでしかなく、今の最新状態を見ることができれば、他の銀河と衝突して渦巻銀河の一部になっているかも知れないもんな。

 何となく見ていると、棒渦巻ができて来る経緯も、こうしたら棒渦巻になりそうって思うんですけどね。

 もしかしたら、多くの研究者も、イメージは頭の中にあるかも知れないんですけどね。

 多分、いろいろ材料を集めて詰めて行って、観測によって分かったことがそれを裏付けるとできて、初めて発表するんじゃないのかなあって、思います。

 棒渦巻、どうやってできたんだい?

 

 高校生の頃、銀河が何で渦巻なのか、知りたかった。

 当時私たちの銀河は、棒渦巻ではなくてM33みたいな、渦巻銀河だと考えられていて。

 今は、どうやって棒渦巻ができるのか、知りたい。

 

 この30年でも、天文学の進歩は目覚ましいと思った。

 このペースで行けば、私が生きている内に、そういう疑問の答えは出るんでしょうか?

 小倉専門員のような人たちが、地道に積み上げて、解き明かしてくれることでしょう。

 楽しみです。

 

 あ、質問タイムに、とある名物おじさんが質問しましてね。

 あの、時間という物は相対的なんだからっていう、前にもブログで書いたかもしれないおじさんです。

 大体、質問の趣旨がこんがらかっているので、意味不明の方向に転がって行くし、講演をされている人が結構困るというパターンに陥りがちで。

 かつて、リファレンスルームで捕まって、ヘンな問答をすることになった訳ですが。

 明らかに、観測や実験の知識で感覚的に落ちていると思える部分もあったんですけどね。

 でも、私の硬い頭で理解できないわと思っていた相対性理論の、そもそもの始まりのところを、実は抑えているんじゃないのかなと後から気付いたり。

 そういう、へんてこりんなおじさんなんですが。

 小倉専門員、一つ一つ、まじめに聞きながら、とても正面から質問に答えていました。

 今の天文学の研究も、今のところ観測結果からそういう宇宙像や理論が強く支持されてはいるものの、今後新しい理論が登場することによって変わる可能性はある。

 ただ、今の観測結果に従えば、そういう考え方で正しいだろうとされているって、説明されてました。

 何か、良いです。

 とても、研究者らしい、まじめなお答え。

 面倒なので良い加減にお茶を濁してしまうってことをしないで。

 好感度上がった。

 芸人ではないので、観望会の際のしゃべりは、まだまだなんですが。

 いや、あのちょっと真面目で、まだ慣れない感じのなゆたでの星空案内も、結構、良いと思う。

 そういうのが好きな人は絶対にいるよね。

 小倉専門員が、少年の頃、宇宙に胸を熱くした、何かそういうところに響く、少年がいるかもしれない。

 ちょっとそう思います。

 受けを取るばかりがすべてじゃないですもんね。

 でも、最後に残って宇宙談義って行きたかったけど、あのもつれた質問をするおじさんが小倉専門員を捕まえていたので、近づかずに帰って来ました。

 また、マニアな宇宙のお話ができる機会があったら良いな。

 あ、進行の斎藤研究員の、一年くらい前の「物理学者は・・・」発言も、結構良かったし。

 ああ、ホンマに、マニアな話ができる機会が欲しいな。

 もちろん、その分、お仕事を増やしてしまうことにはなりますけどね。

 

 楽しい時間でした。

 感謝です。

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