「なゆた」へ「宇宙の終わり」を聞きに

 兵庫県佐用町の西播磨天文台に、行ってきました。

 「なゆた」という2メートル(望遠鏡の主鏡の直径)の望遠鏡があります。 

 どうでも良い話ですが、高速道路に自力で初めて乗りました。

 この年でも、「初めて」をクリアするって、楽しいです。

 母をお泊りで預けました。その前に、初めて高速に乗る話をすると、もしもそんな無謀をして、私が死んでしまったら、母はどうすればいいのかと、泣かれまして。

 どんだけ、信用ないねん!

 まあ、運動神経は、絶望的でしたけどね、昔から。

 

 雨が降っていたので、観望会(天体観測をすることを一般的にこう呼ぶ)は無理かと。

 ステファンさんという研究員の人の講演会があるってことで。

 タイトルは「宇宙の終わり」です。

 

 今回は、今後、気分転換に星を見る機会を作るための下見を兼ねたお出かけなので、講演会という目的があると、何となくろうろするよりも不審でなくていいかなあと思ったわけで。

 天文少女だったのは、はるか昔。

 講演会だって、マニアなおやじたちに交じると、きっと私にゃ分からんだろうと、斜に構えて、でも一応手帳とペンは出して。

 親子連れもいてますけど。

 カップル、夫婦、親子連れ、家族連れ、マニアなおやじというかお爺ちゃんのピンの人々。

 講演が少し進むにつれ、分かって来た。

 多分、半分以上の人は、聞いていて、概要も分かっているか怪しそうだ、一組の親子連れのお父ちゃんは寝ていて、途中で出てしまった。

 

 で、聞いていると、意外と分かる。

 概要と、結論は、何か分かってしまった。

 今の天文学では、こういうのが宇宙の終わりの姿として有力な考え方なんだなあと思った。

 当然面白くなってきて前のめりになる、一人でふらりとやって来た、あやしい元天文少女。

 質疑応答で、頓珍漢なことを言う、数学オヤジ。

 結局、会が退けてから、講演者のステファンさんではなくて、時々日本語ほかのフォローに入っていた、日本人の研究をしている職員さんに、質問。

 「銀河団というのは、重力で影響を及ぼす範囲の銀河の集まりということなんですか?」

 「私たちの銀河団で、10の40乗年後に起こる巨大なブラックホールができるような状況は、他のそれぞれの銀河団でも、時間のスケールがほぼ一緒くらいで、同じようなことになると考えられているんですか?」

 どちらも、YESでした。

 なるほど。

 じゃ、私の理解はほぼあっているわね。

 意外と、この講演会での、一番食いつきの良い参加者になった気がした。

 面白かった。

 あとから質問したときに、日本人の職員さんと、友の会会員というご夫婦とで、ちょっと雑談。

 アインシュタインも、宇宙が限りなく膨張し続けて、最後には消えるという結論を受け入れがたくて、宇宙定数を持ち込んで、(理論上)宇宙の膨張を止めようとしたけれど、その宇宙定数が、逆方向に、思った以上に強く働いて、宇宙が限りなく膨張するということを、返って証明してしまった。

 そんな話を聞いた。

 人は、そうなんだなあ。

 膨張がいつか収縮に転じて、凝集し、何かのはずみでまた膨張を始めるというモデルなら、限りなく、一定の姿の宇宙が続いていくことになり、感覚としては、人はそれを信じたいもので。

 でも実際には、限りなく膨張し続けた結果、すべての物質というか、エネルギーというか、存在が、お互い干渉できなくなるくらいに離れてしまい、化学変化はもちろん、それよりも小さいレベルでの物理的な干渉による現象も起こせなくなる。

 その時に、光というエネルギーがあったとしても、2つの粒子と粒子の間を飛んで、もう一つのものに到達しようにも、膨張の速度が速すぎて、光速では到達できないほどに離れてしまい。

 いわば、宇宙は、「無」になって消える。

 

 昔は、そういう事実が、怖いと思っていた。

 でも今は。

 私がもっと早く、宇宙のスケールでは、一瞬で終わるんだなあと思う。

 父が亡くなって、父が耕していた水田が、他の人の手に託されて、瞬く間に、すぐそばにあることも、目まぐるしく変わっていく。

 祖母が嫁いできた時の様子として聞かされた風景は、今の風景から、全く想像すらできない。

 私が生きている今の思いも、消えて、どんなにとどめようとしても忘れ去られて。

 そういうことが繰り返されていく。

 自分の一生は、そういう物なんだなあと、ぼんやり考えるようになって。

 それが怖いとか、むなしいとかいうより、なんか、人の一生が、じんわり愛おしく感じられるようになった。

 

 というわけで、「今を生きよう」なんですよ。

 あれこれ、考えています。

 観望会で、降るような星を見ようとか。

 酸素バーナー初級の教室を始めようとか。

 新しい作品のネタを、ちょっと思いついたとか。

 これでもか!っていうくらい、世俗的な執着と欲望に生きようと思います。

 この流れで、愛を見つけられないかと淡い期待があったけど、なさそう。

 両親より少し若いご夫婦とお話しできて、とても楽しかったです。

 遠くから来られていて、私なんて近い方だなと思った。

 友の会入会を勧められました。

 それも良いかな。

 熱心に相対性理論と宇宙の終わりを絡めた話を聞いていた若いカップルにも興味を持ったけど、たぶん、年配のご夫婦に感じたような共感は持てないだろうなあ。

 吉田兼好の徒然草にあった、仲良くできない人のうちの、「若き人」だから。

 まだ、自分の未来は無限だと信じている。

 今、いろいろとヨレヨレの私の感覚を、体感的に理解できない、そういう温度差があるに違いないと思う。

 でも、見知らぬ場所で。

 結局、人とのかかわりが面白い。

 昔は、星そのものだけで良かったのに。

 

 今度は、ペルセウス流星群の頃に行こうと思います。

 

 そうそう。

 雨模様は、雨模様で好き。

 山々が、霧に覆われる風景は、とても好きです。

 良いところでした。大撫山。

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